育休取得後の退職率を防ぐには?
昨今企業における女性の長期活躍が叫ばれる中、仕事と家庭の両立の仕方に頭を悩ませる方が多いのではないでしょうか。
仕事と家庭の両立は、男女問わず働く人々が抱える大きな問題となっています。
しかしながら現状は、働く女性の約6割が第一子出産前後に離職しています。
(参考: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000105409.pdf )
ではなぜ、働く女性は出産前後に退職を選ぶのでしょうか。今回は出産前後の女性が退職する理由を考察し、会社ができる対策について考えていきます。
目次
1.出産前後の女性が退職を選ぶ理由
2.制度の充実
3.社員へ育児休暇に対する理解向上
4.女性たちの声
1.出産前後の女性が退職を選ぶ理由
女性が退職を選ぶ理由は、「仕事と子育ての両立への不安」があるのではないでしょうか。
産前に積み上げたキャリアを維持しつつ、家庭も両立したいという思いの女性は多くいます。しかしながら実際は、子供の体調で急遽仕事を休まなければならなかったり、仕事が終わっていなくても子供の迎えに行かなければならなかったりと、自らコントロールできない状況が多くあります。
こうした状況が負担となり、「退職」を考え出す原因になっていると考えます。
もちろんそれだけではなく、育児=女性のタスクという固定概念も要因としてあるでしょう。実際男性の育児休業取得率は、上がってきてはいるものの5.14%にとどまっており、まだまだ育児休業制度を取得する男性は少ない状況です。
(参考: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-29r/07.pdf )
2.制度の充実
では、どうすれば子育て中の女性が働きやすい環境を作れるのでしょうか。事業主には育児介護休業法で以下の制度を設けることが定められています。
①短時間勤務制度
事業主は3歳未満の子供を育てる従業員が希望すれば利用できる、所定労働時間を1日6時間に短縮する制度。
②時間外労働の制限
事業主は小学校就学までの子を養育する従業員から請求があった場合には、1ヵ月で24時間、1年で150時間を超える時間外労働を禁止する制度。
③深夜業の制限
事業主は小学校就学までの子を養育する従業員から請求があった場合には、午後10時から午前5時までの間の労働を禁止する制度。
④看護休暇の制度
小学生就学前までの子供がいる場合、年5日を限度として時間単位での休暇取得を可能とする制度。
子育てをしながら働く方々を守るため、このような法律が定められています。しかしながらこれだけでは安心して働き続けることは難しいでしょう。
3.社員へ育児休暇に対する理解向上
貴重な人材を育休後も雇用し続けるためには会社側の努力も必要です。会社側が子育てに理解を示し、育休後も続けやすい環境づくりに力をいれていくことが求められてきます。
①フォロー体制の確立
育休後の不安要素としてあるのが、子供の体調不良による急な休みや早退ではないだろうか。そういったときにいつでもフォローしてもらえるような体制があれば、復帰後も働きやすい環境といえるでしょう。
誰かが欠けてもフォローできるように、業務の配分やチーム構成を行い急なお休みに対するフォロー体制を作り上げることは最低限企業が行うべき対策の一つと言えるでしょう。例えば、一つの業務にメイン担当とサブ担当を設ける「ジョブ・シェアリング」や、自身の対応履歴を他の社員が確認できるようにメールのCcに入れておくなどの対応が望ましいと思われます。
②育児に対する理解
会社や従業員の育児に対する理解は必要不可欠なものです。この理解が欠如していれば、復帰後に働きにくい環境だと判断されてしまい、退職を招くことになりかねません。
会社全体で育休制度に対する理解を深め、急なお休み等が発生したときに助け合える環境づくりを行いましょう。
復帰しやすい雰囲気づくりや育休の取得実績をつくれば、いずれ育休を取得した社員も復帰しやすくなり定着率の向上につながるはずです。
③ハラスメントの防止措置
育児介護休業法では取得対象社員の上司・同僚が職場において妊娠・出産・育児休業を理由にハラスメントを行わないよう防止措置を講じる必要があります。
具体的な防止措置としては、従業員への周知やハラスメントを行った社員に対する懲戒規定の追加などがあります。また、それに伴い、ハラスメントに関する相談窓口の設置も必須でしょう。
企業側には以上のような対応が求められるでしょう。
では実際に企業側が独自で制定している制度をみてみます。
①株式会社メルカリ
(育児・介護休暇の有償化)
子どもの看護および家族の介護で休暇を取得する場合は、5日間を特別有給休暇とし、最大で10日間まで休暇取得が可能な制度。
②株式会社サイバーエージェント
子供の急な発熱や登園禁止期間などに、子どもの看護をしながら在宅勤務をできる制度。
③レバレジーズ株式会社
通常の休憩時間の他に1日2回、30分ずつの時間を育児に充てることができる制度。
企業によっては、このような制度が設けられています。
4.女性たちの声
実際に育児休暇を取得したことがある女性社員にアンケートを実施したところこのような回答を得ることができました。
①育児休暇中の職場の様子を知りたい。
自身が復帰した際に、スムーズに職場復帰できるように定期的に連絡をもらえると不安が軽減されると思った。
②職種の変更
復帰前と同じ仕事に戻ることができるのは理想ではありますが、実際問題は、生活スタイルが変わったことにより難しいことが実情です。
そのため復帰前に面談を実施し、職種や部署の変更等を行うことができれば、より多様な働き方に対応することができます。
③相談窓口の設置
自身の上司が男性のため、相談しにくいことが多々あります。そんなときに専用の相談窓口があれば気軽に相談できます。
このように復帰前から不安を抱えている方が多くいます。企業はしっかりと社員の声に耳を傾け、復帰前からのサポートや制度を整えることが必要です。
育休復帰後社員の定着率向上には、企業側も努力が必要です。しかしながらそれはいずれも難しいものではありません。
復帰後も長く働き続けてもらうために、お互いが歩み寄りよりよい環境を整えていくことが急務なのではないでしょうか。